【公演レビュー】N響×ジョルダン シューマン・ワーグナー(@NHKホール)
NHK交響楽団 第2057回 定期公演 Aプログラム2日目(@NHKホール)
指揮:フィリップ・ジョルダン
曲目:
シューマン 交響曲第3番「ライン」
ワーグナー 「神々のたそがれ」より抜粋
雪が降りしきる渋谷へ、今月もN響を聴きに行ってきました。ホールに入るまでの冷えた空気も、席に着いた瞬間にすっとほどけるのが好きです。
フィリップ・ジョルダンを聴くのは、2024年5月にウィーン国立歌劇場で「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を聴いて以来です。
ワーグナーを得意とする指揮者と、春祭で日本最高峰のワーグナーを聴かせてくれるN響。その共演を、今日はとても楽しみにしていました。
後半のワーグナーは超名演。音が鳴った瞬間に空気が変わり、ぐっと別世界へ連れていかれました。
この日の演奏を、前半と後半に分けて順番に振り返っていきます。
シューマン 交響曲第3番「ライン」
まずはシューマンのラインから。
曲の聴きどころは別記事にまとめているので、よければそちらも参考にしてみてください。
演奏は立ち上がりこそ少し慎重な印象でしたが、楽章が進むにつれて音が育っていく感覚がありました。ここから楽章ごとに、印象に残ったところをまとめていきます。
第1楽章
立ち上がりは少しくぐもった響きに感じて、合奏もやや揃い切らない瞬間がありました。ここは正直、少しだけもったいなかったです。
ただ、その一方でジョルダンの面白さもすぐに見えてきます。意外なメロディーをふっと浮かび上がらせたり、全身を使って色をつけたりして、音楽に陰影が生まれていました。
第2楽章
2楽章では、少しずつオーケストラが乗ってきた印象です。音が前へ進みはじめて、全体がうねるようにまとまり、推進力が出てきます。まさにライン川を表現しているようでした。聴いている側も自然に流れに乗れる感じがありました。
第3楽章
3楽章は牧歌的な雰囲気がよく出ていて、ヨーロッパの風景がふっと立ち上がるようでした。オペラ指揮者らしく歌わせ方がうまく、旋律が自然に呼吸しているように聴こえます。
美しい田園の光景が思い浮かんで、こちらまで幸せな気持ちになりました。
第4楽章
4楽章は空気が変わります。最初の和音から重厚な響きがしっかり出てきて、荘厳な雰囲気がきれいに形になっていき、音楽が一段深いところに入っていく感覚がありました。
第5楽章
終楽章では、ジョルダンの動きが大きくなりつつ、同時に繊細にもなっていくのが印象的でした。そのサインにN響がしっかり応えて、音がぐっと前に出ていました。
金管がよく鳴っていて、劇的なフィナーレが形づくられました。盛り上げ方も自然で、最後は気持ちよく締まりました。前半は、後半に向けて音が育っていったという感触が残りましたね。
ワーグナー 神々のたそがれより抜粋
休憩を挟んで後半。ここから空気がはっきり変わりました。シューマンで丁寧に育ててきた音が、ワーグナーに入った瞬間、別の質感に切り替わりました。出だしから全然音が違ったのです。
今回は神々のたそがれより「ジークフリートのラインの旅」、「ジークフリートの葬送行進曲」、「ブリュンヒルデの自己犠牲」が抜粋で演奏されました。
ジークフリートのラインの旅
最初の一音から、深く暗い奥行きのある響きで、一気にワーグナーの世界へ連れていかれました。音が分厚いのに濁らず、ホールの空間そのものが重くなるような感覚がありました。ここで、この日の後半は特別な時間になる、と直感しました。良い演奏会は最初の一音でわかる、とよく言いますが、まさにそんな瞬間でした。
ジークフリートの葬送行進曲
さらに暗く、さらに深く。音楽が沈み込むように進んでいき、気持ちも自然と内側へ引っ張られていきます。重さがあるのに動きは止まらない。その緊張感がずっと続いて、息を吸うのを忘れるような時間でした。
ブリュンヒルデの自己犠牲
そして、ついにブリュンヒルデが来ました。ここからはもう、分析とかそういうものではありません。理屈で追う前に胸がいっぱいになって、ただ音楽に包まれている感じ。恍惚という言葉がいちばん近いでしょう。
技術がどうこうという問題ではなくて、これこそカタルシス。そう、これが私がコンサートに行く理由なのだと、あらためて思い出させてもらいました。
まとめ
抜粋で体感30分ほどなのに、後半は圧倒されっぱなしでした。ニーベルングの指環は本来、4夜にわたって15時間前後の物語を辿っていきます。あの長い旅をくぐり抜けて最後に辿り着く景色は、いったいどれほどのものなのか。今日の演奏を聴いて、いつか通しで結末まで体験してみたいです。
これまで私の中でワーグナーといえばティーレマンの存在が大きかったのですが、そこにジョルダンが加わりました。そう思わせるだけの説得力が、今日の後半にはあったのです。
素晴らしいワーグナーをありがとうございました。
次の来日も楽しみですね。
今回はここまで。
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