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コラム・エッセイ

【公演レビュー】N響×ソヒエフ マーラー交響曲第6番(@NHKホール)

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NHK交響楽団 第2054回 定期公演 Aプログラム2日目(@NHKホール)

指揮:トゥガン・ソヒエフ

曲目:マーラー 交響曲第6番「悲劇的」

久しぶりにNHK交響楽団の定期公演へ行ってきました。そういえば前回、私が参加した定期公演もソヒエフでした。これで3年連続、ソヒエフの定期公演を聴いています。
一言で言うなら、美しい彫刻のようなマーラーでした。
マーラーが書いた「設計図」をソヒエフが極限まで細かく、そして美しく磨き上げていました。
楽章順はアンダンテ→スケルツォ。ハンマーは2回でした。

マーラー6番が初めての方も、各楽章で「何を聴くと迷子になりにくいか」を添えながら、公演の印象を振り返ります。

楽章別ガイド&今回の感想

第1楽章:主人公の性格を想像

この曲の冒頭の行進は、勢いというより「主人公(英雄)の性格紹介」の場面だと感じています。ソヒエフは、その英雄を咆哮させるのではなく、どこか抑制された表情で立ち上げました。行進曲風の主題が鳴った時点でオケはすでにソヒエフ色に染まり、アルマのテーマも息をのむほど美しかったです。

そして印象的だったのは、ソヒエフの指揮姿でした。ソヒエフらしい細かな指示を出す瞬間もありましたが、あえて多くは語らず、オーケストラに委ねる時間も長かったのです。それでも音楽の輪郭は崩れず、むしろ自然に整っていく。N響との絆が深まっていることを心から実感できました。

第2楽章(アンダンテ):束の間のユートピア

マーラー6番の途中にある、天国のような美しい時間です。ここは難しく考えず、音がほどける瞬間に身を預けると、ぐっと近づきやすいと思います。

今回はこの楽章が白眉でした。出だしから徹底して美しく、思わず涙が出ました。ソヒエフらしい、極限まで美しいマーラーが最もはっきり現れた気がします。弦楽器の泣くような旋律に深く感動しました。

第3楽章(スケルツォ):皮肉やアイロニー

ここはリズムのねじれや、どこか突き放すような表情が出ると、マーラーらしい苦味が立ち上がります。

ただ今回は、私にはやや冗長に感じました。美しく作り上げた反動が出たのか、民族風のアイロニーが強くは届かなかったです。ここは好みが分かれるところかもしれません。

第4楽章:抑圧が一気に開放される

終楽章は長く、途中で迷子になりやすいのですが、私が目印にするのは「抑圧がどこで開放されるか」です。静かな緊張が続き、ある瞬間から風向きが変わります。

今回も前半は第1楽章と同じく抑圧された雰囲気で、思いがけない旋律がふっと浮き彫りになるのが面白かったです。そしてハンマーが打ち下ろされたあたりから、抑え込まれていた感情が一気に爆発し始めました。暴れるオケ、そして暴れるソヒエフ。しかし暴れ回るというより、劇場的で、長大なオペラを観るような終幕でした。

全体の感想:名演。ただし感情的ではない。

全体を通して、N響は改めて世界に誇れるオーケストラだと感じました。ソヒエフの色を出しつつ、抑制された指揮から多くを読み取り、細かな欲求に応えていく。
100周年、おめでとうございます。

正直に言えば、圧倒されて心を持っていかれるというより、今回は細部を見つめる聴き方になりました。マーラーの芸術を、解剖図のように美しく示される感覚でした。それでも名演であることは揺るぎません。次もまた、ソヒエフの演奏を期待しています。

今回はここまで。
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それでは、また。

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    医師の聴く専
    20代の医師/クラシックは演奏できず、ほぼ“聴く専”。大学生の頃にクラシック音楽の魅力にハマりました。非専門家の目線で「初めてのコンサート」「チケットの取り方」「サブスクの聴き方」などを分かりやすく整理して発信しています。少しでも多くの方にコンサートへ来ていただくことが目標です。
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