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旅先で味わうクラシック

ライン川が連れていく景色|シューマンの交響曲を聴きながら

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デッキに出ると、暖かい太陽の日差しが頬にふわっと当たりました。川は大きく、流れはゆっくりで、こちらが何もしなくても景色が進んでいきます。

両岸にはちょっと高い丘が続いていて、段々のブドウ畑が広がったかと思えば、次の曲がり角では険しい岩場になる。時々、荘厳な古城がふっと姿を表します。

河辺の街はまさにヨーロッパらしい佇まいで、可愛い家並みの向こうに教会の塔が見える。川とともに育ってきた暮らしが、今もそのまま続いていることを実感しました。

その川をゆっくりと下っていくクルーズは、旅の予定を詰め込みがちな人ほど、一度味わってみてほしい時間です。のんびり過ごしながら、風景と空気と、少しほどけた気持ちを持ち帰ることができます。

ライン川とは

ヨーロッパを代表する大河のひとつがライン川です。
スイスのアルプスに源を発し、スイスを流れ、場所によってはフランスとの国境沿いを通りながらドイツを北へ進み、最後はオランダで北海へ注ぎます。全長はおよそ1,230kmほどとされます。

ライン川は、昔から内陸水運に適した川として重要視され、流域の物流や産業の発展を支えてきました。川沿いに街が育ち、人が集まれば文化も育ちます。城や教会、ぶどう畑の広がる風景が今も残る地域があるのは、ライン川が長い時間をかけて暮らしを運んできた証拠かもしれません。

そして、ライン川の魅力は、物流や産業だけでは語りきれません。川沿いに広がる街並みや古城、ぶどう畑のある風景は、今も多くの人の心を動かします。
そんな空気に触れて、音にして残した作曲家がいます。ロベルト・シューマンです。彼がライン地方の印象を音楽に写し取ったのが、交響曲第3番「ライン」として親しまれている曲です。

シューマン:交響曲第3番「ライン」

シューマンとは

シューマンは1810年、ツヴィッカウに生まれたドイツの作曲家で、作曲だけでなく音楽批評でも大きな足跡を残しました。
ロマン派の作曲家として、感情の揺れや文学的な想像力、自然へのまなざしを音に映した点が特徴です。

批評家としては1834年にNeue Zeitschrift für Musik(新音楽時報)の創刊に関わり、当時の新しい音楽を積極的に紹介しました。
誌面でショパンを評価したことや、ブラームスの才能を広く知らせたことは、シューマンの影響力を示す代表例です。

作品面ではピアノ曲、歌曲、室内楽に傑作が多く、交響曲も4曲作曲しています。そのうち交響曲第3番は1850年に作曲され、通称ラインとして親しまれています。

交響曲第3番「ライン」

シューマンはライン川沿いを好んで散歩していたと言われます。そして、ライン川上流にある都市ケルンを訪問し、そこにあるケルン大聖堂に大きな感銘を受けたとされています。
ライン川の雄大さ、それを取り巻く美しい自然や荘厳な街並みを音楽で表現したのがこの交響曲なのです。

この曲は5つの楽章でできています。シューマンがライン川周辺で感じた空気を、短い旅の場面の連なりとして味わえるのが魅力です。

  • 第1楽章

    最初からぱっと視界が開けるような始まりです。川幅の広い流れ、空の高さ、前へ進む推進力がそのまま音になった感じがあります。
    聴きどころは、明るい主題が何度も戻ってきて、ぐいぐい前に運んでくれるところ。クルーズで景色が勝手に進んでいく感覚に少し似ています。
  • 第2楽章

    歩くようなリズムが心地よくて、川沿いの街の生活がちらっと見える楽章です。舞曲っぽい親しみがあるので、ここで一気に聴きやすくなります。
    聴きどころは、同じリズムが繰り返されながら、景色の角度だけが変わっていくところ。岸辺の家並みや、ぶどう畑が続く区間を思い出しやすいです。
  • 第3楽章

    速度が落ちて、時間がゆるむ楽章です。水面のきらめきというより、光がやわらかくなる夕方の気配。説明しづらいのですが、気持ちの呼吸が整う感じがあります。
    聴きどころは、旋律が急がずにほどけていくところ。旅の最中にふっと静かになる瞬間が好きな人は、この楽章が刺さりやすいと思います。
  • 第4楽章

    空気が一変して、石造りの大きな建物の中に入ったような荘厳さが出てきます。ケルン大聖堂や、そこでの宗教的な儀式の印象と結びつけて語られることが多い楽章です。
    聴きどころは、トロンボーンの重厚な響き。音が派手というより、天井の高さを感じさせるような重みで、クルーズで古城や教会が現れたときの気持ちに重ねやすい場面です。
  • 第5楽章

    最後は外へ出て、また風が通る感じに戻ります。明るくて、ちょっと誇らしい終わり方。旅の終盤に、街が近づいてきて人の気配が濃くなるような雰囲気もあります。
    聴きどころは、全体が軽やかに回転していく推進力。第1楽章の大きさとは違って、もう少し身近な明るさで締めてくれます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
ヨーロッパを旅する機会があれば、ライン川の景色に触れてみるのもおすすめです。川沿いの街や古城、ぶどう畑の広がる丘は、写真で見るよりずっと体に残ります。そこに重ねるように、シューマンの交響曲第3番「ライン」を聴いてみると、音楽が連れていく風景がもう少し立体的になるかもしれません。

そしてちょうど来週、NHK交響楽団の定期公演でシューマンの交響曲第3番「ライン」が取り上げられます。会場はNHKホール、2026年2月7日(土)と8日(日)の2公演です。
指揮はフィリップ・ジョルダン。ドイツ語圏のオペラで経験を積み、2020〜2025年にはウィーン国立歌劇場の音楽監督を務めた指揮者です。

チケットの残席状況は日々変わるので、気になる方は公式の案内で確認してみてください。私もデッキで感じた、あの暖かい日差しを思い出しながら聴きに行きます。

https://www.nhkso.or.jp/concert/202602A.html?pdate=20260207

https://www.nhkso.or.jp/concert/202602A.html?pdate=20260208

今回はここまで。
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    医師の聴く専
    20代の医師/クラシックは演奏できず、ほぼ“聴く専”。大学生の頃にクラシック音楽の魅力にハマりました。非専門家の目線で「初めてのコンサート」「チケットの取り方」「サブスクの聴き方」などを分かりやすく整理して発信しています。少しでも多くの方にコンサートへ来ていただくことが目標です。
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