ラトルで聴くマーラー|サイモン・ラトル入門(まず聴く3枚)
ソヒエフによるマーラー6番は名演でした。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ソヒエフのアプローチはこれまでのマーラー解釈からはやや変化がありました。
ただ、ソヒエフのマーラーは王道とは少し違う手触りがあります。あの独自の彫りの深さは魅力なのですが、一般的なマーラーの入口としては、少しだけ特殊かもしれません。
そして現実的な話をすると、ソヒエフはマーラーの録音がほとんどありません。家で復習したくても、たどる道が見つかりません。
今回は、現代を代表するマーラー指揮者として名前が挙がることの多いサイモン・ラトルを取り上げます。初めての方でも安心して聴ける入口として、名盤と一緒に紹介します。
サイモン・ラトルの略歴
サイモン・ラトルはイギリス・リヴァプール生まれ。子どもの頃はピアノやヴァイオリンと並んで打楽器にも親しみ、ユース・オーケストラでは打楽器奏者として演奏していました。のちにロンドンの王立音楽院(Royal Academy of Music)で学び、1974年に指揮のコンクールで頭角を現して、指揮者として歩み始めます。
国際的な評価を決定づけたのが、バーミンガム市交響楽団(CBSO)での時代(1980〜1998年)です。この18年間でオーケストラの存在感を大きく高め、ラトル自身も世界的な指揮者として知られるようになりました。
その後、世界最高峰の一つといわれるベルリン・フィル(BPh)の首席指揮者/芸術監督を2002年から2018年まで務め、教育活動や新しい取り組みでも大きな足跡を残します。
2018年にベルリン・フィルを退任後は、ロンドン交響楽団(LSO)の音楽監督(2017〜2023)として英国でも活動を深め、現在はバイエルン放送交響楽団(BRSO)の首席指揮者として活躍しています(2023/24シーズンから)。
ラトルの魅力は、緻密な譜面の読み込みで全体の見通しを作りながら、歌うべきところはしっかり歌わせるところ。テンポの揺らし方も自然で、音楽が呼吸しているように感じられます。さらに教育活動にも熱心で、ベルリン・フィル時代のアウトリーチや、LSOでの若い世代に向けた取り組みなど、「クラシックを身近にする」活動を継続しています。
ラトルとマーラー
サイモン・ラトルにとって、マーラーは特別な作曲家です。ラトル自身、少年時代に聴いたマーラーの交響曲第2番《復活》が「指揮者を志すきっかけになった」と語っています。
そして彼は、節目の場面でマーラーを選んできました。たとえばラトルがベルリン・フィルに初めて登場した1987年の演目は、マーラーの交響曲第6番。
さらに、ベルリン・フィルの首席指揮者としての任期を締めくくる時期(2018年)にも、フィルハーモニーでの最後の公演として同じ第6番を取り上げています。まさに「始まりと終わりが同じ作品でつながった」形です。
ラトルのマーラーは、美しさと狂気のバランスが絶妙だと感じます。緻密に楽譜を読み込み、歌うところはしっかり歌わせ、爆発させるところは思い切り爆発させる。そのうえでテンポや強弱の呼吸が自然なので、長い作品でも集中が切れにくいんですね。
「長大で、どこを聴けばいいのか分からない」——そんなマーラーを、きちんと「聴ける形」にしてくれる指揮者だと思います。
ここからは、ラトルのおすすめ録音を紹介します。
おすすめ録音
マーラー:交響曲第6番《悲劇的》
サイモン・ラトル×BRSO(2023年)
まずは先日ソヒエフが演奏した第6番です。
《悲劇的》という副題にふさわしい重さと荒々しさがある一方で、ふと息をのむような美しさも同居するこの曲の「二面性」を、ラトルはとても上手に両立させています。
ラトルは2023年9月にBRSOの首席指揮者に就任し、その最初期のプログラムの一つとしてこの第6番を取り上げています。この録音は、そのミュンヘン公演のライヴです。
演奏全体の見通しがはっきりしていて、迷子になりにくいのも魅力です。暴れるところはきちんと暴れ、歌うところはしっかり歌う。そのメリハリがあるからこそ、長大な終楽章でも集中が切れにくいです
初めての聴き方メモ:
第4楽章にはハンマーが2回登場します。ぜひ探してみてください。
マーラー:交響曲第2番《復活》
サイモン・ラトル×BPh(2010年)
《復活》は、合唱も登場する巨大な作品です。ラトルはこの大作を、細部を整理しながら見通しよく聴かせてくれます。ベルリン・フィルの鳴りっぷりもさすがで、「大きな音の洪水」になりすぎず、きちんと道筋が見えるのが気持ちいい。
第4楽章「原光(Urlicht)」では、独唱が登場します。ここを歌っているのが、ラトルの妻でもあるマグダレーナ・コジェナー。深みのある声で、終楽章への静かな入口を作ってくれます。
初めての聴き方メモ:
合唱が登場するのは最後の最後です。
ラスト数分は合唱に加えてオルガンも鳴り、圧巻のフィナーレを迎えます。
マーラー:交響曲第9番
サイモン・ラトル×BRSO(2021年)
特別な作品です。もし「この世に一曲しか残せない」と問われたら、私は迷わずマーラーの交響曲第9番を選びます。私の最愛の作品です。
その数ある録音のなかでも、とくに心をつかまれるのが、このラトル×BRSOのライヴ(2021年11月、ミュンヘン)です。
この作品が描く世界を、私は(勝手に)「辛い現世、楽しかった現世、戦った現世、そして美しい来世」のように聴いてしまいます。ラトルはそれを、感情で押し切らず、でも冷たくもせず、たっぷり提示してくれます。
ただ、初めての方には少し難しい旅かもしれません。ほかのマーラー作品に触れて耳が慣れてきた頃に、ぜひ挑戦してほしい一曲です。
初めての聴き方メモ:
第4楽章だけ聴いてみるだけでも大丈夫です。マーラーが最後に残した美しい世界の核心を味わえます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
マーラーの世界に浸ってみたい方にはラトルはおすすめの指揮者です。
もう一度おすすめの録音をまとめておきますね。
マーラー:交響曲第6番 サイモン・ラトル×BRSO(2023年)
https://amzn.asia/d/63h5qCY
マーラー:交響曲第2番 サイモン・ラトル×BPh(2010年)
https://amzn.asia/d/daC5qZ3
マーラー:交響曲第6番 サイモン・ラトル×BRSO(2021年)
https://amzn.asia/d/hnji4AE
また、2026年11月にラトルはBRSOを率いて来日予定です。
まだ噂レベルではありますが、マーラーの交響曲第2番を披露する予定とのことです。
もしこれが本当なら必見です。続報を待ちましょう。
今回はここまで。
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