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はじめての「第九」の聴き方|長くても楽しめる4つのコツ

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私の中で第九といえばマーラーの交響曲第9番です。
・・・
嘘です。やっぱり多くの方が思い浮かべるのは、ベートーベンの交響曲第9番ですよね。
ベートーベンの交響曲第9番(いわゆる「第九」)は、クラシック初心者でも「名前は知っている」特別な1曲です。
ただ、演奏時間はおよそ70分。はじめてだと、それだけで少し身構えてしまうかもしれません。でも大丈夫です。全部を完璧に聴こうとしなくてOK。
今日は、初めての方が安心して楽しめるように、4つのコツをお伝えします。

第九を楽しむ4つのコツ

  • 全部を理解しようとしない
    長い曲なので、「聴けたところを楽しむ」で十分です。
  • 楽章ごとの役割を知る
    第九は4楽章構成でそれぞれ役割が異なります。ここを押さえるとわかりやすいです。
  • いちばんわかりやすいところから入る
    みなさんが知っている合唱は4楽章なのでここから聴いて大丈夫です。
  • 聴く順番を工夫する
    おすすめルート:4楽章→2楽章→全曲通し

ベートーベンとは

「耳が聴こえにくくなっても作曲を続けた人」で、交響曲第5番『運命』を書いた人。そんなイメージを持っている方も多いかもしれません。
でも、ベートーベンの凄さは「難聴でも作曲した」ことだけではありません。
彼は、音楽の形そのものを押し広げ、後の時代に大きな影響を残した作曲家です。音楽史は「ベートーベン以前/以後」で語られることもある——それくらい大きな節目を作った存在だと言われます。

当時の音楽は、宮廷や有力な貴族(そして教会)の支えのもとで作られるものが中心でした。しかし、ベートーベンは、出版や演奏会なども含めて活動の場を広げ、より多くの聴衆に届く音楽を作っていきます。音楽家が「雇われる人」ではなく、「作品で勝負する芸術家」として立つ流れを、決定的に強めた人でもあります。

そんな彼が晩年に生み出した傑作が交響曲第9番、通称「第九」です。最高傑作の一つとして語られることも多く、合唱を取り入れた革新性も含めて、西洋音楽の歴史の中で特別な場所に置かれてきた作品です。ユネスコの「世界の記憶」に自筆譜が登録されていることからも、その文化的な重みがうかがえます。

「第九」の聴きどころ

ベートーベンの最高傑作と言われると、なんだか難しそう、と身構えてしまうかもしれません。
でもベートーベンは、専門知識がなくても心で受け取れる音楽を書いた作曲家でもあります。
「第九」のすごさは、芸術作品としての深さがありながら、初めて聴く人でも気持ちが自然に引っぱられていく感じがつかみやすいところにあると思います。

ここからは各楽章ごとの聴きどころを、できるだけやさしく解説していきます。

第1楽章:霧の中からドラマが立ち上がる

始まりは、はっきりしたメロディというより、霧の中で何かがうごめくような感触です。
そこから少しずつ音が厚くなり、緊張が高まっていって、気づくと大きなドラマの中に連れていかれます。
ベートーベンらしい重厚さが出てくると、「来た来た…」という感じがして、私はここがまず好きです。

私には、現実世界の厳しさや、ベートーベン自身の苦悩が描かれているようにも聴こえます(もちろん感じ方は人それぞれで大丈夫です)。

オーケストラが奏でる重厚な音を楽しむと聴きやすいと思います。

第2楽章:軽快なリズムが楽しい

第2楽章は、リズムの気持ちよさでぐいぐい進む楽章です。ここではティンパニ(鍋型の太鼓)が大活躍します。冒頭からティンパニが力強く打ち込んで、音楽の輪郭をはっきりさせてくれるんですね。 

弦楽器が刻むきびきびした動きの中に、ティンパニの一撃が入ると、空気がピンと引き締まります。私には、第1楽章で描かれた厳しさに対して、正面から踏み出していくようにも聴こえます。

活躍するティンパニに注目すると聴きやすいと思います。

第3楽章:「祈り」の時間

第3楽章は、ここまでの緊張感から少し離れて、気持ちを整える時間です。速度表示は Adagio molto e cantabile(ゆっくり、歌うように)。静かで美しい旋律が、形を変えながらゆっくり広がっていきます。

私には、苦しさからふっと解放されて、「祈り」や「感謝」のような気持ちが立ち上がってくる楽章に聴こえます(感じ方は人それぞれで大丈夫です)。

とても美しい反面、ゆったりしているぶん眠くなる人もいるかもしれません。ここは「がんばって集中する」より、第4楽章に向けて耳と心を休める場所だと思って、身を委ねるのがいちばんです。

聴きどころとしては、「静かな始まり → 少しずつ音が増える → ふっと明るく開ける」という変化を追ってみてください。流れが見えると、ゆったりした楽章でも退屈しにくくなります。

第4楽章:伏線回収と待ちに待った合唱

ついに最終楽章ですが、有名な合唱はすぐに始まるわけではありません。冒頭は少し荒々しく、これまでの物語を振り返るような音楽から始まります。 

第1〜第3楽章の「テーマのかけら」が次々に顔を出すのですが、チェロとコントラバスが語りかけるように割り込み、「それじゃない」と退けていくように進みます。 

そして、ついに「歓喜の歌」。最初は低弦がそっと差し出すように始まり、少しずつ形を整えていきます。 
そのあと独唱が 「O Freunde, nicht diese Töne!(おお友よ、こういう音ではない)」 と歌って、合唱へ——ここからの迫力は、ぜひ全力で浴びてください。 

まとめ

いかがでしたでしょうか。
ぜひ一度、第九を聴いてみてください。

最初から70分しっかり集中して聴くのは、正直むずかしくて当たり前です。
まずは第4楽章から、あるいは「ここ気になるな」と思った楽章から、つまみ食いで大丈夫
何度か触れているうちに全体像が見えてきて、最後には通しで聴ける日が来ます。

もし機会があれば、コンサートで体験してみるのもおすすめです。音の圧や合唱の迫力は、会場だと別物に感じられます。

参考までにおすすめの映像を置いておきますね。
第1楽章は00:06〜、第2楽章は15:23〜、第3楽章は29:30〜、第4楽章は43:09〜です。

今回はここまで。
次回は第九のおすすめ録音を紹介します。
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更新はXでも流しています。公演前の不安を減らす小ネタも書いているので、よければフォローください。

それでは、また。

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    医師の聴く専
    20代の医師/クラシックは演奏できず、ほぼ“聴く専”。大学生の頃にクラシック音楽の魅力にハマりました。非専門家の目線で「初めてのコンサート」「チケットの取り方」「サブスクの聴き方」などを分かりやすく整理して発信しています。少しでも多くの方にコンサートへ来ていただくことが目標です。
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